【解説】新型コロナ「接触確認アプリ」の目的は?個人情報やプライバシーは大丈夫?

【解説】新型コロナ「接触確認アプリ」の目的は?個人情報やプライバシーは大丈夫?

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厚生労働省は6月12日、「新型コロナウイルス接触確認アプリ」の概要やQ&Aを公表しました。アプリのリリースは6月中旬を予定。アプリの目的、個人情報やプライバシーについて、簡潔に説明します。

「新型コロナウイルス接触確認アプリ」の目的は?

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新型コロナウイルス接触確認|厚生労働省

6月中旬、日本でも「新型コロナウイルス接触確認アプリ」(以下、接触確認アプリ)がリリースされます。

接触確認アプリの目的は主に2つ。

  1. 接触確認アプリで通知を受けたユーザーの行動変容
  2. 保健所や公衆衛生当局が濃厚接触者を把握する

陽性者と接触の可能性があるユーザーが適切な行動を取ることができるようになり、保健所など公衆衛生当局が適切な対応を取ることができるようになります。

結果として、より効果的なクラスター対策が実施できるようになります

「新型コロナウイルス接触確認アプリ」の概要

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陽性者と接触した可能性があると通知される(1日1回)

接触確認アプリは、AppleとGoogleが共同開発したAPI(Exposure Notification Framework)を利用。ユーザーの同意を得た上で、スマートフォンのBluetooth通信を利用し、新型コロナウイルス感染症の陽性者と接触した可能性について、通知を受け取ることができます。

接触確認アプリの概要は以下の通り。

  1. Bluetooth通信を利用し、近接したユーザー(概ね1m以内で15分以上)を検知。スマートフォン内で暗号化して記録
  2. 「新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム」(HER-SYS)が、陽性と診断されたユーザー本人に処理番号を送付
  3. 陽性と診断されたユーザーは処理番号をアプリに入力
  4. 入力された情報は「通知サーバー」に保存される
  5. 「通知サーバー」は、HER-SYSに保存された情報を照会
  6. 照会の結果が正しかった場合、「通知サーバー」が近接したユーザーに対し情報を通知
  7. 症状等に応じて、帰国者・接触者外来等の受診までをアプリまたはコールセンターで案内
  8. 近接したユーザーは、案内された情報をもとに、帰国者・接触者外来等の受診に予約、受診する

なお、アプリからの通知は1日1回となっています。アプリへの登録タイミングによっては、陽性者との接触があったとしても即座に通知されない場合もあります。

「新型コロナウイルス接触確認アプリ」では個人情報やプライバシーはどうなっている?

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個人が特定される情報は収集されない

「近接した状態」に関する情報は、端末から外部にでることはなく、プライバシーが確保されます。GPSなどの位置情報も利用されず、記録もされません。

また厚生労働省などの行政機関や第三者が、接触の記録や個人の情報を利用・収集することはありません。

  • 電話番号、位置情報など個人が特定される情報は記録しない
  • 近接に関する情報は、14日経過後に自動で無効となる
  • ユーザーは、いつでも同意を撤回し、アプリを削除することで記録を消去できる
  • どこで、いつ、誰と近接した状態か、ユーザーには開示されない
  • 「通知サーバー」は、個人情報や陽性者と接触者の関係が分かる情報は管理しない
  • 「通知サーバー」に保存された情報は、通知後に削除される
  • 陽性者と、通知を受けたユーザーの関係は、国・自治体は把握できない

中国や韓国では早期に「接触確認アプリ」が導入されていましたが、スマホ端末の位置情報を当局が収集し、実質的に「政府による国民の監視」を可能にする仕様でした。

アプリが広く利用されることで、感染拡大の防止に

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国民の約6割利用が目標だが、到達せずとも効果がある

陽性と診断された場合、アプリへの登録は必須ではありません。陽性者が自身で判断し、アプリ登録することで、過去14日間に概ね1m以内で15分以上の近接した状態の可能性があったユーザーに通知され、検査や受診などのサポートを早く受けることができるようになります。

接触確認アプリは、世界各国で導入されています。各国で仕様がさまざまで、日本が導入するのは最もプライバシーに配慮されたモデル。イギリスでも同様のBluetoothを利用した接触確認アプリが公開されていますが、オックスフォード大学の研究では、新型コロナウイルスを完全に抑制するためには全人口の約56%が利用する必要があるとしています。

ざっくり国民の約6割が利用が目標だとするならば、LINE並(月間MAU 8,300万人)に利用されなければいけません。

しかし局地的にでも普及することで、感染拡大を防ぐ効果が高くなる可能性は十分にあります。例えば、感染者数の多い東京で多くのユーザーが利用すれば、都内の感染拡大は防げますし、病院や介護施設といった高リスクな施設や、一般の店舗でもアプリ利用を促すことで、感染拡大の防ぎながら、経済活動を継続すことも可能になるかもしれません。

今後はOSレベルで組み込み、アプリ無しでも機能をオプトインする計画

AppleとGoogleによる4月の発表では、世界の公衆衛生当局にAPIを提供後、数ヶ月をかけてOSレベルに接触確認通知を組み込み、アプリなしでもユーザーがオプトインすることを選択することで利用できる計画です。

なお対応OSは「iOS 13.5 以上および Android 6 以上」とされています。