「HHKB Professional HYBRID Type-S」レビュー、熱心なファンがいるのも納得する至高のキーボード

「HHKB Professional HYBRID Type-S」レビュー、熱心なファンがいるのも納得する至高のキーボード

2020年6月28日

1日の大部分をパソコンに向かい合って過ごすのだから、多くの時間を共にするキーボードにこそこだわるべきだった。何度も耳にしたことのある高級キーボード「Happy Hacking Keyboard(以下、HHKB)」を遂に使い始めたのですが、たった数日使っただけで手の疲れが大きく軽減したことを実感。デザインも気に入っている。

なぜ「HHKB」を選んだのか。(前段が長い)

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「HHKB Professional HYBRID Type-S(JIS配列/墨)」

そもそもなぜ「HHHKB」を使うことになったのか。レビューをする前に軽く説明しておきたい。

第1の理由は「Magic Keyboard」に発生した不具合だ。MacBook Proをクラムシェルモードで使っているため、外付けキーボードとして「Magic Keyboard」を愛用してきた。しかし、最近になってキーボードが不調になり、意図せずキーが押されっぱなしになる、という現象が頻発していた。

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「Magic Keyboard」

第2の理由は、Magic Keyboardの代わりとして、ゴリミーのg.O.R.iさん(@planetofgori)から譲り受けたメカニカルキーボード(Vinpok Taptek)を使ってみたが、僕の使用スタイルにまったく合わなかったということ。

まず、青軸のメカニカルキーボードのタイピング音に家族から「うるさい」と苦言が。次にJIS配列に染まりきった体は、US配列のキーボードが無理だった

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「Vinpok Taptek」
参考記事:【レビュー】Vinpok Taptek:Magic Keyboardとほぼ同じキー配列の青軸メカニカルキーボード | ゴリミー

しかし、Magic KeyboardからVinpok Taptekにシフトして気が付いたことが1つある。良いキーボードはその気にさせてくれるということだ。無駄に仕事ができる気がするし、やる気がめちゃくちゃ出る。

しばらく使っているうちに、US配列には慣れたが、「どうせ会社のMacはJIS配列だし、USキーボードを会社に用意するのも面倒だし、そもそもUSにする恩恵がキーボードの選択肢が増える以外にない」と考え、JIS配列で良いキーボードってないかな?という思考に。

「あ、HHKBがあるじゃん!」

だがHHKBは高級キーボード。買ってみたけど自分に合いませんでした、では済まされない値段だ。買う前に実機を触ってみたい!と、ブロガーからは「PFUの中の人」としてお馴染み、ぴよひこさん(@piyohicom)に連絡。実機に触れられる店舗を教えてもらった。(公式サイトに書いてあります)

結局、実機を触ったことでHHKBの購入を心に決めたわけだが、僕が欲しい「HHKB Professional HYBRID Type-S(JIS配列/墨)」の在庫がないことが判明。

「どういうことだよ!」と、PFUの中の人こと、ぴよひこさん(@piyohicom)に再び連絡。どうやら在庫切れのようで、6月下旬にならないと手に入りそうにないという状況とのこと。

そして、6月下旬。

そろそろ在庫が復活したかな?と思ったら、まだ在庫が復活しない。調子の悪いMagic Keyboardをだましだまし使うのも限界。困ったなーと思っていたら、PFUが「HHKB Professional HYBRID Type-S(JIS配列/墨)」を提供してくれることに……!!(ありがとうございます)

ブロガーは、レビュー用にメーカーからガジェットが提供される機会が多いが、メーカーからの提供には2種類ある。

1つは、「提供するから気に入ったらレビューしてね」というパターン。もう1つは、「提供するから必ずレビューしてね」というパターンだ。

PFUは基本的に前者。今回も「レビューしてくれたら嬉しいです〜」くらいの温度感だったが、最高に気に入ったのでレビューしようと思う。

「静電容量無接点方式」の独特なキータッチが病みつき

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「HHKB Professional HYBRID Type-S(JIS配列/墨)」

そもそも「HHKB」とは、どんなキーボードなのか。端的に言えば、プログラマーが理想とする合理的なキー配列をしたプロフェッショナル向けのキーボードだ。その歴史は長く、ファーストモデルは1996年に発売。東京大学名誉教授・和田英一氏の発案によるもので、以下の宣言とともに世に送り出された。

「アメリカ西部のカウボーイたちは、馬が死ぬと馬はそこに残していくが、どんなに砂漠を歩こうとも、鞍は自分で担いで往く。馬は消耗品であり、鞍は自分の体に馴染んだインタフェースだからだ。いまやパソコンは消耗品であり、キーボードは大切な、生涯使えるインタフェースであることを忘れてはいけない」

Happy Hacking Keyboard | 20th Anniversary | PFU

今回提供いただいたのは「HHKB Professional HYBRID Type-S」というモデル。Type-Sとは、高速タイピング性(Speedy)と静粛性(Silent)を向上させたモデルを意味し、タイピングの心地よさに軽快さが加わった、速さと快適さを追求したプロモデルだ。

現行のフラッグシップモデルであり、機能もフル搭載されている。Bluetooth接続、USB接続(Type-C)をサポートし、キーマップ変更機能を搭載。Bluetooth接続では、4台まで接続が可能で簡単なキー操作でデバイスを切り替えることができる。

HHKBは「静電容量無接点方式」という入力方式を採用している点は、最重要ポイントの1つだろう。これは一般的なキーボードが、電極端子を押し付けて接触させることでスイッチングするのに対し、塩水スプリングを押し下げ、電荷容量値の変化でスイッチングする方式。

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メンブレン方式と静電容量無接点方式(PFU公式サイトより)

軽快な打鍵感をもたらすだけではなく、キー入力で同じ文字が何度も入力されるような「チャタリング」が発生せず、耐久性にも優れている。身近なところではセブン銀行ATMのテンキーにも採用されているそうだ。

打鍵音は入力している自分自身は気にならないレベルではあるが、周囲にいる人は気になる人もいるだろう。そこで打鍵音の軽減になるという、吸振パッドを底面に貼ることにした。

【公式】HHKB ASMR -キーボードタイピング音(Keyboard Typing Sounds) Happy Hacking Keyboard Type-S

吸振パッドによる打鍵音の低減効果はてきめん。デスクマットなどを利用することでも、ある程度は打鍵音を低減することができそうだ。

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底面に吸振パッドを貼っている

Magic Keyboardとい違い、キーストロークが深いという点が気になる人も多いと思う。Magic Keyboardのキーストロークはかなり浅いため、指を滑らせるように動かすことができるのが特徴だが、「HHKB Professional HYBRID Type-S」のキーストロークは3.8mmと数倍深い。

しかし、キーの跳ね返りが良いため、指がキーに引っかかるようなことは全くない。逆に長時間キーボードに向かい続けるのであれば、肩こりや疲れの軽減が大いに期待できる。

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キーストロークは3.8mm

実際、毎日夕方には手の疲れが気になっていたが、HHKBを使うようになってから夕方に疲れを感じることがなくなった。

キー配列はJIS配列を利用している。これまでMacでJISで配列を利用していたのであれば、DIPスイッチでMacモードに変更すればほぼ違和感なく利用することができるだろう。若干の慣れは必要だが、1時間も触っていればすぐに慣れるレベルだ。

DIPスイッチを使えば、簡単にキー配列やモードを変更できる。「HHKB Professional HYBRID Type-S」には6つのスイッチが用意され、オンにしたときに有効になるのは以下の設定だ。(参考:Happy Hacking Keyboard | 背面スイッチの説明

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DIPスイッチ
DIP SWキー機能OFF機能ON
SW1WindowsモードMacモード
SW2ControlControl英数
左 FnFn英数Control
SW3BSBSDelete
SW4Shift
Delete
Control
SW5左 ◇Alt
左 AltAlt
SW6通常モード省電力モード

※「◇」は、Windowsでは、Windowsキー。Macでは、Commandキーとなる。

キーボードの角度を好みにあわせて設定できる「傾き調整」も可能だ。背面の足を3段階で調整することができる。人によってはパームレストも合わせて使ったほうが手首への負担は軽減される。まだベストポジションを模索中ではあるが、バード電子が販売するパームレスト(クリアー色)も試してみようと検討している。

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3段階に傾きを調整できる

バッテリーが充電式でないという点にも触れておきたい。冒頭でも紹介したとおり、HHKBは「いまやパソコンは消耗品であり、キーボードは大切な、生涯使えるインタフェースである」というコンセプトだ。この思想がバッテリーにも反映されている。

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単三電池を採用しているのには理由がある

キーボードに内蔵した充電式バッテリーを採用すると、キーボードの寿命がバッテリーに左右されることにもなる。バッテリーとキーボードを別にすることで、HHKBはバッテリー寿命とは関係なく長く愛用することができる。そもそも充電池を利用するユーザーが多いので、大きな問題はない。仮に外出先でバッテリーが切れてしまっても、USB-Cで直接接続するか、モバイルバッテリーを接続することでBluetooth接続も可能だ。ちなみに、動作時間は一般的なアルカリ乾電池で約3カ月。Magic Keyboardは満充電で、約1カ月となっている。

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カラーキートップにすると愛着が湧く

僕がHHKBのカラーに「墨」を選択したのは、印字がそれほど気にならないという理由だ。

US配列のキーボードには、キーに文字が印字されていない、完全なるプロフェッショナルモデル「無刻印」が用意されている。残念ながらJIS配列には無刻印は用意されていない。JIS配列を使うユーザーは真の意味ではプロではないということか……。

HHKBを溺愛する友人、トバログを運営するブロガー/YouTuberの鳥羽恒彰さん(@tobalog)も、HHKBのJIS配列を愛用しているが、彼は無刻印に憧れ「印字を削る」という荒業に及んでいた。

Escキー、Controlキーは、公式から用意されているカラーキートップセットに変更した。US配列であれば、KBDFANSなどで様々なキーキャップが用意されているので、自分だけのHHKBにカスタマイズすることで、より愛着が湧くだろう。

最後になるが、2020年5月28日、待望のmacOS版が「キーリマップ」機能がリリースされている。これまでMacユーザーがキーリマップをしたければ「Karabiner-Elements」などを利用する必要があったが、今後は公式ツールで変更できる。

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macOS版が「キーリマップ」機能も登場

ここまで「Happy Hacking Keyboard Professional HYBRID Type-S」を紹介してきたが、熱心なファンがいることも納得できる最上級のキーボードだと再確認することができた。

仕事をする上で、最上級のパフォーマンスを発揮するのであれば、仕事道具にはこだわりを持ったほうがいい。プロのアスリートがシューズ等にこだわるように、プロとして仕事をしているのだからキーボードに投資するのは至極当然の発想だ。

「デスク」や「椅子」などを仕事に最適化していくように、毎日多くの時間をともにするキーボードだって自身に最適化していくべきだ。

だが世の中には多くのキーボードが販売されている。自分にぴったりのキーボードを見つけ出すのは"沼"でもある

ひとまずHHKBを相棒とすることにしたが、がんばってほしい点が2つある。1つは、MacBook Proなど、多くのラップトップはキーストロークが浅いため、HHKBの使い始めはキーストロークの深さに慣れるまで違和感があった。慣れの問題ではあるが、キーストロークがもう少し浅くなれば違和感なく使えたような気もする。(このキーストロークがHHKBの心地よい打鍵感を生み出しているとも考えられるが)

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JIS配列の無刻印は出ないのかな

2点目は、やはりJIS配列の無刻印がないこと。これは多くのJIS配列ユーザーが同じように思っているだろう。オプションとしての販売でも構わないので、無刻印キーを公式で販売して欲しい。もっと言えばカスタマイズ用に、オプションで購入できるキーキャップのカラーバリエーションを増やして欲しいくらいだ。

とはいえ、最高のキーボードであることは間違いない。興味を持った人は是非、手にとって確かめてみてほしい。